その手が涙を掬い上げる。
「あーっ!健と梨華がイチャついてる!」
「そんなんじゃねーよ!」
囃し立てる周り。
梨華はただ俯いていた。
「…なあ、上がらね?」
「え、うん。」
そう言って梨華の腕を取る。
何やってんだよ…
何やってんだよ、俺。
「待て。」
「ゆう……」
プールから二人で上がろうとするのを直前で止める。
少し赤くなった梨華の目が、俺を捕らえた。
「あ、彼氏サン?」
ぱっと離される手。
「……うん。」
人はたくさんいるのに、俺らの周りだけ静けさを帯びている。
「梨華、行く。」
「は?え……」
何も分かっていない、状況を理解してない梨華を連れ出す。
梨華と同い年の男に、俺はジェラシーを持っていたんだと思う。