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「メイコ、あんた王子とどーいう関係なわけ?」

昼休み。
サチが、お昼ごはんのサンドウィッチをほおばりながら、あたしに訊ねる。

「しらないわよ。初対面だし」

「えー、ホントー?」

「ホントだってば!てかあんな男、知り合いたくもないわ」

ぺったんこ。人が気にしていることを、よくもまーぬけぬけと。あたしは弁当のウインナーに思いっきり八つ当たりした。

「まさかあの玲央様から話しかけてくるとはねー」

「ホント、災難だわ…」

あたしはふうっと一つため息をついた。

「王子様に話しかけられるなんて、光栄じゃん」

何が王子様じゃ。何が光栄じゃ。あんな失礼なヤツ。

「あたしだってね、成長期なんだからね、乳の一つや二つ…」

サチに愚痴りながら、ウインナーへの八つ当たりを続けていると…

「メイコー、会いたいって先輩が来てるよー?」

突然、入り口にいたクラスメイトに呼ばれた。

「え、先輩?」

帰宅部、役職なしのあたしに会いにくる先輩なんて、居るはずないと思うんだけど。そうつぶやきながら入り口を見ると。

「うわっ……」

にっこり微笑む、見知らぬ男の先輩。そして、何故か、再び女の子の人垣。黄色い声。

今度は、何?

不穏な展開におびえながら、入り口に立つ先輩のもとへ向かうあたし。先輩は私を見つけると、嬉しそうに微笑んだ。

「君がメイコちゃんだよね?」

「そ、そうですが」

薄茶の切れ長の目。すっと通った鼻筋に、女のあたしがみとれるほど色っぽい唇。淡いアッシュブラウンに染められた髪と、スラッとした適度に鍛えられた肢体に、ウチの制服がよく似合っていた。

なんですか、この色気ムンムンの色気の固まりみたいな先輩は。無駄にフェロモン振りまいている気がするんですけど。

そんな事をぼんやり考えていると。



「いやー、可愛くなったね!俺、嬉しいよ」

そう言って先輩は、あたしを、思いっきり抱きしめた。

「きゃぁぁぁぁあああ!!!!」

女の子の黄色い悲鳴と。

「ふんがっ」

間抜けなあたしのうめき声が同時に響く。


…もう、わけがわからない。