―――――翌日。

「ぎゃーーーー!!メイコちゃんなんなの、その格好!!!」

学校から帰ってきて、仰せのとおりにメイド服を身につけて炊事洗濯をこなしていたというのに、またもや亜紀さんの駄々っ子が炸裂した。

「言う通りに着たじゃないですか、メイド服」

「ちっがーう!!メイド服の下に履いているそれは何って聞いてんの!!」

「ジャージです」

学校指定、色気もクソもないえんじ色に白ライン、名前入りの。

「亜紀さん、家事というのは結構、肉体労働なんですよ。こんなぴらぴらしたスカートじゃ、とてもじゃないけど掃除や洗濯なんてできませんよ?」

「そんなことしなくていい!!」

いやいやいや、そんなことするためにココで雇われているはずなんですけど。

「芽衣子さん…さすがにそれはないよ。なんて言うか、色気云々を通り越して超絶ダサイ」

「同感。割烹着の方がまだマシ」

若干引き気味の悠宇くんと玲央さまが、遠巻きに私と亜紀さんのやり取りに口をはさむ。

「ほらね?みんなもこういってるじゃん?早く脱いで、そんなもの」

「い、嫌です!ちょ、触らないでください!!変態!!」

「いいから脱・い・で!!!」

「い・や・だ!!!」

「脱・げ!!」

「HA・NA・SE!!!」

あたしのジャージをひっぺがそうとする亜紀さんに、必死で抵抗する。

やめて!!ジャージがのびちゃう!!これ学校の体育で使うのに…!!

「くっ、こうなったら、奥の手を使うしかないか…」

亜紀さんはそうつぶやくと、ポケットから紙切れを取り出した。

「これは君の雇用契約書なんだけどね」

「……!!」

まさか、たかがこれだけのことで首になっちゃうの…?

「君がそのジャージを脱ぐことを約束してくれたら……時給100円アップしよう!!」

「……!!!!」


な、なんて卑怯なの!!時給…100円…アップ、だなんて。くっ、そんな…そんなものに、あたしは…

「…承知しました」

簡単に屈しました。ええ。