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「はぁぁぁ…」

あたしの深いため息が、いつもの通学路に響く。

朝といい、昼間といい、今日はなんだかおかしい。

見知らぬ人に、いきなりぺったんことバカにされるやら、キスを迫られるやら。

今まで地味~に、堅実~に生きてきたというのに、どう間違えたら、こんな展開になるんだろうか。ホント、どうにかしてる。

あたし、なんかしたっけか?日頃の行いは、そんなに悪くないはずなんだけどなー。

そんなことを思いながらとぼとぼ家路を歩いていると。


「じゃあこれ。今日の分のお金ね」

「ああ」

「また、来週。電話するわね」

「…」

何やら艶っぽい会話が、耳に飛び込んできた。

「……?」

声の方を見ると。

目の前には、高級ホテル。高そうな服に身を包んだ大人の女の人と、赤いスポーツカー。

もう一人は、真っ白な肌に、さらさらした黒いショートカットが印象的な、端正な顔立ちの女の子。

そして、女の人が女の子にキスをしようと…

って、あの子、男の子?
小柄で華奢な体つきで、女の子みたいな顔だけど、亮二と同じ制服だし…。間違いなく男の子、だよね。

ってか、亮二と同じ制服?ということは、中学生じゃないの…?!