---聞き覚えのある声がした。
木内君の声よりも鮮明にあたしの耳に入ってきた。
ドアの方に目をやった。
「何で」
木内君がぼそっと言った言葉ははっきりじゃないけど
ぎりぎりあたしの耳に入ってきた。
あたしもおんなじ事を思った。“何で”って。
「理恵先輩」
「相太君…っ」
「今いいですか?」
「な、別にあたし話すことないんだけど…」
「いいから」
「ちょっと!」
相太君に無理やり腕を引っ張られた。
ガラガラッ
空き教室に連れてこられた。
「な、なに…」
相太君と目が合わせられなかった。
「無視してますよね?」
「し、してないから!」
「嘘つき。」
「嘘じゃなっ…うっ」
唇に感触が合った生あったかい何かが。