「相太ぁ…」

声が枯れかけた。

今現在私はどうしてここにいるのかわからない状況。

白い壁に黒の長椅子。

「おばさん…‼」

「楓夏ちゃん」

ドアがカラカラとゆっくり空き相太のお母さんが出てきた。

見なれたおばさんの顔は、まだ青ざめていた表情から一変安心した表情へと変わっていた。

「大丈夫だって。ありがとうね」

「いいえ」


あの時相太は後ろから来ていた自転車と接触事故をおこした。
命に別条はなく捻挫程度ですんだらしい。

「よかったです。」

安心した声が心の底から出てきた。

これほどまでに心配していたのか。と再確認される。

「もう、ホントばかな子でごめんね」

「いいえ」

「楓夏ちゃんがいてくれてよかったわ」

「そんな…私こそ」


掛け時計に目をやるととっくに6時を迎えていた。

「痛ぇ」

ドアが豪快に開けられ中から相太が出てきた。

「よっ楓夏」

「こら‼ばか相太」

おばさんが反射的に怒ると相太はへへへといいながら痛そうに腕をかくまいながら左腕で頭をかいた。

「…ありがとな」