「無理ですね。もう“命令”しちゃったんで」


なるほど、これが“ゾンビ”というコトか。

自分の意思とは関係なく、相手の命令に従う。

確かに、労働力としては最適だろう。


「だが不味い! まだ私にはこの部屋でヤるコトが残っている! もう一度、命令し直していただきたい」


「もう無理なんですけど……まあ、やってみるのが早いかもしれませんね。“止まれ!”」


これはどういうコトだろうか。

止まらない!

ベッドを降り、黙々と歩いている!


「なぜだ! なぜ私の身体は命令を聞かない!」


「もう一回命令しちゃったからですね」


女がゆっくりと立ち上がる。

なんというコトだ。

このシーンは是非後ろ姿を見たかった。

スーツ姿の女性が立ち上がる瞬間の後ろ姿は素晴らしいモノだ。

なんというかこう、お尻がなんかこう……アレなのだ。

つまり、伝わっているとは思うが、そう、その……アレなのだ。


「一度した命令は取り消すことも、矛盾する命令を上書きすることも出来ません。命令を完了するまでは絶対に終わらない。それが“ゾンビパウダー”の特性ですね」