「お嬢さん。そこは寒くないか?」


「どちらかといえば暑いですけど」


「そうか寒いか」


「いえ暑いです」


「ちょうど偶然にもこのベッド、私の横に隙間があるのだが」


「ばかなこと言ってないで、行きますよ」


「“どこに”、だろうか?」


「決まってるじゃないですか。“≪ビンゾ製薬株式会社≫まで、歩け!”」


すると突然、私の体が自動的に反応した。

起き上がり、ベッドの上を歩きだしたのだ。


これはどういうコトだろうか。

私はまったく、歩こうなどとは思っていない。

どうやってコトに及ぼうかそればかり考えているのだが、なぜ意思に反して体が動いてしまうのだろうか。


しかもなんというコトだ。

スーツを着ているだけでなく、黒い革靴まで履いたままだ。

ベッドが。
まっ白い、もしかしたらこれから一部が赤く染まるかもしれないベッドが汚れてしまう。


「ちょっと待っていただきたい。私の暴走を止めていただけないだろうか」