「……って、なぜ私は撃たれたのに生きているのだ!」


「なんで今さらなんですか! 撃ったタイミングで反応してくださいよ! あぁ、もう。調子くるうなぁ」


なぜこの女、今こんなセリフを発したのだろうか。

“あぁ、もう。調子くるうなぁ”だと?


今までは敬語、正確にいえば丁寧語だったワケだが、それが突然、ラフな言葉になった。

ふいに現れる素の言葉。

大抵の男はコレに弱い。

あくまでも、基本は敬語。

それが大切だ。

崩れた瞬間、自分に心を許しつつあるのか、と感じられるその一瞬。

それがため口になった瞬間である。

コレをやられると、一撃である。

この私でさえも、今の言葉を聞いた瞬間、心臓を撃ち抜かれたような衝撃が走った。


いや、違う。

今、銃声が聞こえた。


なるほど、私はまた実際に撃たれているワケか。

しかも連射だ。

体全体で私は今銃弾を受けている。

ほう、いつの間にかこの女、マシンガンを持っている。

正座したまま撃つとは、たいした女だ。


「……って、止めろ! 死んだらこの興奮はどうすればいいのだ!」


「死なないから大丈夫ですよ。我が社の“ゾンビパウダー”をなめないでください。それに死んだら死んだで、いいサンプルになりますから」