そして目覚めた私は、いつものように鏡を覗き込み、自分の顔に見とれるコトだろう。

それから、部屋着に着替える。

部屋着はもちろん、ガウンだ。

紫色の。

やはり紫ほどセクシーな色はない。

赤ワインを片手に、紫のガウンで、紫色のカーテンを開け、朝日を浴びる。

朝日を浴びるコトで体内時計がリセットされ、次の朝も起きやすくなる。

素晴らしい朝に感謝しながら、赤ワインを一気に飲み干す。

私はそのままキッチンへ向かい、朝食であるステーキを焼く。

国産の最高級霜降り肉だ。

レアに焼きあげたステーキを、今度は白ワインと共に堪能する。

それが私の理想的な朝の過ごし方だ。

毎日それが出来れば素晴らしいと、私は常に考えている。

あくまでも、考えて、いる。


さて、今日も“エア素敵な朝”を楽しむコトにしよう。

まずは着替えだ。

ガウンに……待て。

これはどういうコトだ?

なぜ私はスーツを着たまま寝ていたのだ?


そうか、私はビルで意識を失い、着替えもしないままベッドに入ったワケか。

これは悪夢だ。

あろうコトか、黒いスーツの胸元には穴が開いている。

心臓を銃で撃ち抜かれたときに開きそうな穴が。