なぜこの女はそんな言葉を口にしたのだろうか。

“バカにつける薬”?

そんなモノ、私は求めていない。

私が求めているのは“男のたしなみ”であり、薄ければ薄いほど好ましいとネットの掲示板で調べた!


……イケナイ。

ずいぶんと脱線してしまった。

話を元に戻そう。


結局この女は誰なのだ。

人の部屋に上がり込んで、名乗りもしない。

見覚えのない女だ。

これほどの美人であれば、例え街ですれ違っただけだとしても、私の記憶のどこかには残っているはずだ。

だが、ここで名前を聞くのはどうなのだろうか。

“人に名前を聞く前に、まず自分から名乗ったらどうだ?”

そんなことわざもある。

それと同時に“レディーファースト”という格言もある。

自分から名乗るべきか、女から名乗らせるべきか。

悩むところだが、ここは一つ、名前は後回しにするとしよう。

それよりも先に聞くべきコトが、私にはある。


「……お嬢さん、ご趣味は?」


「……そうね、あなたを殺すこと、でしょうか」


マスクの美女はスーツの胸元に手を入れ、胸のぬくもりが伝わっているであろうけしからん小型の銃を私に向けた。