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「けど、どうして耳いいの?」


 不思議に思って聞くと、彼は小さく笑った。


「どうしてだろうね?」

「私が聞いてるんですけど」

「それはね……」


 彼はそっと、私にだけ聞えるように、私の耳元で囁いた。


「うさぎの耳は、長いからだよ」


 ゾクゾクと背筋を何かが這ったように背を伸ばしてしまう。
 はっと顔を向けると、彼は一層にっこりと微笑んだ。


 このうさぎさんには適わない、と思った。



   end.(初10'10'24)