ドアノブを握った手は、汗でびしょびしょだった。
一歩踏み出して、店に入った瞬間・・・っ

「いらっしゃいませっ!」

ガヤガヤとした店内のざわめきよりも、
その声がハッキリ、深く聞こえた。

「本当に来てくれたんだね。
 魅月ちゃんのことだから、来ないと思ってたよ。」

そう言って、いつもよりも優しそうな目でこちらを見たのは、
鋼汰だった。

ズクンッ

胸になにかが刺さったような感覚だった。

寝起きの鋼汰しか見たことなかったから、
スーツ姿で、顔がハッキリしていて、
髪型もボサボサじゃない鋼汰に、


あたしの心は全部 持ってかれた