「要くん、ご飯できたよ」
諒子がダイニングのテーブルに
2皿のカレーを置きながら言った。
4人掛けのダイニングのテーブルは
なかなか埋まることはなかった。
いつも忙しい父親と母親は大体いない。
看護婦の母親に医者の父親。
思いっきり職場結婚だった。
「いただきます」
要が諒子の向かいに座りながらスプーンを持つ。
食事中、テレビをつけないのが内田家の約束だった。
明るい食事の風景に憧れた母親が決めたものだったが…
「要くん、テレビ見るならつけていいよ?
つまんないでしょ?
もくもくとご飯食べてても」
諒子が気を使ったように言うと
要が諒子を見て…
またカレーに目を移す。
「いいよ。
母さんが決めた事だし」
ほとんどいないくせに
そんな勝手な家訓を決めた母親が少し恨めしい。
いつもいつも、毎日毎日2人で食べる食事は会話が続かない。
それに加えて…
「…それに諒子いるし。
別につまんなくない」
たまにもらす要の一言が…
かなり心臓に悪い。
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