別にメガネがどうこうって問題じゃない。
顔だって決して悪くはない。
髪もさらさらで…
ただ目に入りそうな長さにちょっとうっとおしくなるだけで…
問題は外見じゃなかった。
そう、中身。
「…どうも」
そう言った後、要は何も言わずに自分の部屋に入った。
ちらっと…
一瞬だけ合った目に諒子が笑顔を見せても
口元を緩める事なく階段を上がっていった。
「ごめんね、諒子ちゃん。
要、普段からああゆう奴でさ、気にしないで」
ちっとも要と似てない父親が
笑顔を向けてきて…
諒子が愛想笑いを返した。
父親の少したれた目元も
ホームベース型の輪郭も
くせっ毛な髪質も
どれも受け継いでいるようには見えなかった要の容姿に
『男の子は母親に似る』
そんな言葉を思い出していた。
『休みの日には2人で遊びに…』
あの一瞬にして早くも砕け散った夢にため息をつきながら
諒子がいい加減重たい荷物を床に置いた。
『優しそうな父親と無愛想なお兄ちゃん』
この日、
諒子の家族が増えた。
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