「諒子です。

仕事ばっかりしてる母ですがどうかよろしくお願いしますっ」


諒子が深々と頭を下げると父親が笑って…


「そんなところも好きだから」


と、また優しく穏やかな声を返した。



正直、

前の父親の事があるだけに
母親の男を見る目に疑いを持っていた諒子だったが


新しい父親のその笑顔は諒子が見る限りは、どうやら裏もなさそうで…

諒子も少し安心したように笑顔を見せた。



「あとね、諒子にお兄ちゃんが出来るって言ったでしょ?

もうすぐ戻ってくると思うんだけど、『要くん』って言うのよ。


ちゃんと仲良くしてね」


母親の笑顔に

諒子が満面の笑みを見せる。


「当たり前じゃんっ

あたし兄妹ずっと欲しかったし、仲良くやるよ」


ずっと1人子で育った諒子にとっては兄妹は小さい頃からの憧れだった。


15歳にもなってから兄妹ができるのは、ちょっと微妙だったが…

だけど、気まずさよりも興味の方が勝っていた。




できればイケメンがいいな。とか

休みの日には2人で買い物に行きたい。とか

デザート勝手に食べたとか言ってケンカしたり。とか…


諒子の中での理想がぐるぐる頭をめぐって諒子が表情を緩ませていた時…



後ろで玄関の開く音がした。



「あ、要。

諒子ちゃん達もう来てるぞ」


目をキラキラさせながら振り返った諒子の目に映ったのは…



「…どうも」


明らかにだるそうに返事をする
メガネをかけた男だった。




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