事の始まりは1年前…
「こちらが諒子の新しいお父さんよ」
突然連れてこられた大きな一軒家にまだ戸惑っている諒子に
母親がウキウキしながら紹介した。
母親に紹介された新しい諒子の『お父さん』が
諒子に優しく笑いかける。
その笑顔は本当に優しくて…
母親の元気丸出しの威勢のいい笑顔とはかけ離れていた。
「初めまして。
今日からよろしくね、諒子ちゃん」
今日
母親の再婚相手の家に引っ越してきた。
諒子の父親はいわゆるダメ男で
仕事をしないでギャンブルで借金ばかりを作ってくるような男だった。
それを見かねた母親が諒子を連れて家を出てから早10年。
いつかはこうゆう日がくると思っていた諒子は特に驚きもしないで聞き入れた。
10年間、母親と2人で協力して暮らしてきた。
仕事が大変なのに
いつでも笑顔を絶やさない母親は諒子の憧れで…
そんな母親が幸せになれるならそれ以上の事なんかない。
だから母親から
『付き合っている相手がいる』と聞いたときにもうれしく思ったし
『プロポーズされた』と聞いたときには一緒に泣いた。
だから、
多少戸惑いはあったけど
新しい家族が増える事にはこれっぽっちも反論なんかなかった。
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