「でもね、要くんに言われて気付いたの。

…今まで諒子に甘えすぎてたって。


今だって、諒子の好きなレモンティー入れてやればって言ったのは要くんなのよ。


最近、諒子が部屋に閉じこもってるから要くんも心配してくれてるみたいだし…」




母親が開けたままのドアからは
ほんのり甘いレモンティーの香りが入り込んできていた。


その香りに…

要の優しさが入り込んでいるように思えて諒子の目に涙が浮かぶ。




「なんでもないから…

今まで家事やってたから出来なかった事とか色々やりたいことがあるだけだから…


お母さんだって最近は手伝ってくれるし時間が出来たから自分の事やりたいだけなの…


…だから心配しないで」



「そう?

ならいいんだけど」



諒子が微笑んで見せると
母親も安心したように笑って部屋をでた。



あの時間だけで

もう十分すぎるほどのレモンティーの甘い香りが部屋を包んでいた。



胸いっぱいに吸い込んでしまった香りに…



諒子の瞳に納まりきらなくなった涙が落ちる。





『要くんが心配して…』



必死に消そうとしたって…



同じ家に

隣の部屋に住んでいる要を完全に頭から


心から消すなんて不可能で…




母親が言った言葉にすら敏感に感じてしまって…







『めちゃくちゃ大事にする』



そんな恋愛がしたいって思った。




だけど…






要くん相手にしたかったわけじゃなかったのに…









この気持ちを抱えたまま…



要くんとどう接すればいいのかわからない…








どうすればいいのか…








分からない…










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