その日から諒子がリビングで過ごす時間は激減した。


今までは大好きだった家族の場所…



だけど、要がいる。


要を見るたび

声を聞くたび

触れるたびに膨れ上がる気持ちはもう自分ではどうにもできなくて…






だけど


あってはいけない想い…



行き場なんかどこにもない想い…




それを分かっていたから

これ以上気持ちが大きくならないように


これ以上好きにならないように目から耳から手から…



要をなくしたかった。






……――――トントン。




「諒子、お茶入れたけど…」



ドアがノックされて母親が入ってきた。



今日は休日なのに珍しく父親も母親も家にいて…


本当ならルンルン気分で諒子もリビングで過ごしていたはずだった。







この気持ちにさえ気付かなければ…






「ううん、いいや」


「ねぇ…諒子。

あの日の事でまだ怒ってるの?」


笑顔を向けた諒子に
母親が申し訳なさそうに話を切り出した。



「…怒ってないよ」







あたしに…

怒る権利なんてないよ。




大切な家族にこんな想いを抱いてるあたしに…



そんな権利なんてない。






あたしの想いは間違ってる。




あたしの想いが…




家族をばらばらにした。









あんなに幸せだったのに…







あたしが要くんを好きになったりしたから…






家族が気まずくなった。








何よりも大切な家族を…









あたしの想いが壊してく―――…










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