その日を境に

両親と要との間に小さな溝が出来たような気がしてならなかった。



自分の考えすぎなのか、

あの日の事を気にしすぎているのか…



それとも

本当に家族の何かが変わってしまったのか…




なんとも言えない不安が諒子の胸を襲う。








『諒子、昨日はごめんね…』


あの日、何も聞かなかった振りをしてリビングに下りた諒子に

母親が申し訳なさそうに言った。



今までだって何度もこうゆう事はあった。


誕生日に帰ってこれなかった時

参観日に来られなかった時

遊園地に行く約束を破った時…



何度も

何度もあった。



その度に笑って許せて来れたのに…



それなのに

あの日は…




笑顔を返すことができなかった。



『いいよ…』


そう一言返すのがやっとで…




笑えなかった。





『大丈夫か?』


そんな諒子に気付いてか

要が諒子を覗き込んで…



要の顔を見た途端


気持ちの中のギスギスした部分が消えていくのが分かった。



気持ちが軽くなって…


泣きそうになった。








ごまかせないくらい大きく膨らんだ気持ちが…


諒子の中で

また大きさを増す。





兄妹の関係では物足りなくなってしまった自分を忘れるために


あの日、初めて要の言葉を無視した。




要の送ってくる視線に胸の痛みを感じながら…


諒子が振り返ることなくリビングを後にした。




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