諒子が黙ってグラタンを食べ始めた時…
要が重たい口を開いた。
「別に気になんないよ。
オレ諒子の作る料理好きだし。
…全部うまい」
食べながら言った要の言葉に…
せっかく必死に押さえていた涙がじわじわと滲んできて…
テーブルの上の料理がぼやけていく。
要の言葉が優しさからかどうかはわからなかった。
だけど
タイミングの良すぎる要のうれしい言葉が胸に響きすぎて…
我慢していた涙がポロポロとこぼれだした。
テレビもついていないダイニングには
要がカチャカチャと食事をする音と
諒子の小さな泣き声が響いていた。
諒子の涙が治まるまで要は声もかけずに食事をしていて…
そのおかげで諒子もすっきりするまで泣く事ができた。
「…食べれば?
腹減ってるだろ?
その間にオレ風呂掃除してくるから」
やっと涙の治まった諒子に要がぶっきらぼうにそう言って席を立った。
諒子が顔を上げると父親と母親の分のお皿もほとんど空になっていて…
そんなに大食いじゃない要が食べてくれたんだと思うと
余計に涙が止まらなくなった。
キレイになったお皿が…
要の不器用な優しさが…
胸を締め付けた。
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