「買い込みすぎだろ…」
振り向いた先には要の姿があって…
諒子が思わず俯いた。
「だって…
今日お母さんもお父さんも早く帰れるっていうから…」
諒子の言葉に要が諦めたようにため息をついて…
そして諒子の手からもう1つ荷物を持って歩き出した。
「あれー?要帰るのー?」
その後ろから要を呼ぶ声がして…
諒子がその声がした方向に目を向ける。
そこには男女数人が集まっていて…
「悪いけど」
その集団に向かって要が一言だけそう言った。
ビニール袋をガサガサと揺らしながらどんどん歩く要に
諒子が慌てて声をかける。
「要くんっ、友達と約束してたんじゃないの?
いいよ、あたし1人で帰れるからっ」
そう言っても要の足は止まらなくて
そんな要に諒子が戸惑っていると…
要が振り向くことなく諒子に言う。
「いいよ。大した約束じゃないし。
それにオレにも手伝わせろって言っただろ?」
要の言葉に
諒子が少しだけ困ったように笑みをこぼす。
要が普通に言った言葉が
全て特別に聞こえてしまう。
何気ない兄妹の会話が
全てうれしくなってしまう。
どうしょうもない想いが…
胸の中でくすぶっていて…
喉が…
胸が…
体中が苦しかった。
要の背中が男らしくて…
諒子が目を逸らした。
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