「今日は機嫌よくない?」
帰り支度をする諒子に
実姫が振り向いて声をかけた。
今週は実姫と諒子の席の列は
掃除当番がない。
だけど、諒子のウキウキの原因はそれだけではなかった。
「今日ね、お母さんもお父さんも帰り早いんだって。
いっぱい夕飯作ろうかと思って」
笑顔を向けてから実姫の家庭を思い出して、しまったと思ったが…
諒子の視線の先にはうれしそうに笑う実姫の姿があった。
「よかったね。
ずっとすれ違いだったもんねっ」
実姫は今年から寮生活になっていた。
母親がいなくなって父親と2人で暮らしていた実姫だったが
今年になって父親が勝手に寮入りを決めたんだと実姫から聞いていた。
だから
この手の話題はなるべく振らないようにしてたのに…
自分のうかれように少し反省してから実姫と別れた。
近所のスーパーでカートを押す。
制服でスーパーに入ることに最初こそ抵抗があったものの
今となってはすっかり常連だった。
前のアパートからも近かったこのスーパーは
引っ越してくる前からよく使っていた。
あまり広くない店内は時間がかからず買いたいものを買えるので
便利だった。
グラタン…
あとサラダ作って…
あ、でもお父さんが筑前煮がおいしいって言ってくれたしな…
色々と考えながら買い物を済ませて袋に詰める。
そして…
スーパーを出た時に始めて気付いた。
「…重っ」
色々詰め込んだスーパーの袋は悲鳴をあげていて
ついでに言うと諒子の腕も同じくらい声を上げていた。
あまりの重さに少し躊躇しながらも歩き出した時…
右手に持っていた袋を後ろから取り上げられた。
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