「ねぇ…」
カレーを見つめたまま諒子が口を開いた。
ゆっくりと視線を上げると真っ直ぐに見つめてくる要と視線がぶつかる。
その視線を逸らさないまま…
諒子が重たい口を開く。
「要くんは…
好きな人とかいないの?」
自分でもびっくりした。
こんな事を聞いた自分に。
…義理の兄への質問にこんなにドキドキしている自分に。
諒子の言葉に要が目を伏せて…
「…さぁな」
口元を少しだけ緩めながらそう答えた。
はぐらかされたのがわかって…
でもこれ以上聞くことなんかできなくて…
諒子が再び視線をカレーに移した。
『さぁな』
もしもいなかったらそんな事言わない。
『いないよ』
きっと要くんはそう答える。
…いるんだね、好きな人。
『めちゃくちゃ大事にしたい』
そう思える相手が…
要くんにはいるんだ…
半年間、必死で押し込んできた想いが…
ギシギシと痛む。
いっその事捨てられればいいのに。
こんな報われない想いなら…
家族をこじらせる想いなら…
あたし、いらないのに…
要くんは
あたしのものになんか一生ならないんだから…
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