それから半年の間、どうにか気付いてしまった想いを隠そうと…


消し去ろうと努力をした。





自分の想いが報われないのは分かっていたし、

第一、『家族』その輪を壊してしまう事が分かっていたから。




今まで、母親と2人だったから。


だから、

こんな風に大勢で暮らす事が憧れだった。



『お父さん』

そう呼べば当たり前のように笑顔を返してくれる父親が憧れだった。



父親と笑い合う母親の幸せそうな顔を見るのが好きだった。




ずっと2人だったから…




だから今の生活が大切で大切で…






絶対に壊したくなんかなかった。



多少自分が犠牲になったとしても

守りたかった。




どうしても



この家庭を守りたかった。










だから…


自分の想いを消し去りたかった。






なかった事にしたかった。












「…諒子」



目の前のカレーを見ながらぼーっとしていた諒子に
要が珍しく話しかけた。


要の声に諒子が一瞬体をすくませて…


そして少し笑顔を作った。



「なに?」


なんとか見られるようになった要の顔を見ながら
諒子が気まずそうに口を開くと

要がスプーンを止めて真っ直ぐに諒子を見つめる。



その目に…


暴れだした心拍数が



諒子の消せない想いを表していた。



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