「要くん、今日も2人とも夜勤?」
諒子が聞くと要が重たい口を開く。
「…そう。
父さんは遅くに帰ってくるから夕飯いるって。
母さんは朝ごはんだけでいいってさ」
ソファに横に座りながら…と、言うよりは横になりながら
要が長い足を組みかえる。
無駄に高い身長は父親譲りらしい。
Vネックの生地の薄い黒のセーターに
カーキ色のパンツ。
要の家での服装はほぼ決まっていた。
「もう、食べる?」
諒子がエプロンをつけながら聞くと
要が一瞬だけ諒子を見て…
「諒子の都合でいいよ」
ぽつりと呟くように言う。
要と家族になって1年…
未だに2人の間には微妙な距離感があった。
普段ならおしゃべりな諒子も
寡黙…よく言えばクールな要相手に
ぺらぺら話しかけられる訳でもなく
かと言って要から会話を振ってくる事なんかほとんどない。
最初は気まずくて話しかけられなかった。
だけど今は―――…
諒子の胸に秘めた想いが…
出てこようとする言葉を閉じ込める。
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