「諒子、指貸して」
その翌日、朝ごはんの用意をしていた諒子に
要が声をかけた。
昨日の今日でどうしていいのかわからない諒子が
要に背中を向ける。
じっと見つめてくる要の目が見られなかった。
「もう大丈夫だよ。
それより朝ごはん…」
諒子が冷蔵庫から牛乳を取り出そうと伸ばした手を
要が掴んだ。
「……」
それだけで何も言えなくなってしまって…
顔が熱くなっていくのが分かって…
諒子が俯く。
要が持ってきた絆創膏を貼り返る間
一度も顔が上げられなかった。
要のメガネの奥の目に
何もかも見透かされそうで…
キレイな目に
気持ちが見透かされそうで…
ただ黙って俯いていた。
大きく高鳴ってしまった心臓のせいで…
指先のキズが痛んだ。
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