啓太は中学から実姫が付き合っている彼氏で
何かあるごとに実姫に暴力を振るっていた。
いわゆる『DV彼氏』だった。
顔にあざを作って学校に来たことが何度かあって
諒子がしつこく聞いて、ようやく実姫が白状した。
暴力を振られてまで付き合い続ける実姫は
正直諒子には理解できなかった。
でも…
最近、少しだけ…
少しだけ実姫の気持ちがわかるようになった。
寂しさを埋めたくて手っ取り早く適当な男と付き合った自分と
寂しさを埋めたくて1人の男に執着する実姫は…
やっぱり似ていると思ったから。
要の言葉を聞いて初めて自分の今までを振り返った時、
実姫の気持ちが少しだけ分かった。
実姫に偉そうに『別れなよ』なんて言う資格なんて自分にはない。
そう思った。
だけど…
「別れなよ。
ちゃんと恋愛しなくちゃダメだよ」
一緒に抜け出したい。
そう思った。
同じような境遇だからこそ…
似ているからこそ…
実姫に幸せになって欲しかった。
一緒に…
笑いたかった。
諒子の言葉に
実姫が曖昧に笑った。
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