湯川くんは栗色の髪の毛を揺らせながら俯く
「そうだよな。だって俺、自分に嘘ついてる。ホントはまだ咲多のこと諦められてないのに、まだ好きなのに「忘れて」とか言って…。」
「…」
あぁズルい。湯川くんは。無意識にこんなドキドキさせる様な事を言って…

「だけどさ、傷つけたくなかったんだ。いや、傷つけるのが恐かったんだ。」
「大切な人を失うような気がして…」





神様、湯川くんもですか?湯川くんも悩み、傷つき、たくさん泣いた過去があるんですか?
どうしようもなく湯川くんが小さく見えた。
今、彼を捕まえなくていつ捕まえるのか。

今だ。

だって私達が生きているのはかけがえの無い「今」


湯川くんを抱き締めた。
湯川くんは思ったより男の子で。
どういうことかって言うとよく分かんないけど、例えば他と比べて華奢だと思っていた背中に腕を回しきれない所とか。シャンプーの香りとか。全てが愛しくて、もどかしかった。