「…あ、あの」

先生は私にココアの缶を手渡して、自分の分の缶コーヒーを開けて言った。

「…何」

「…何で私ここにいるんでしょうか」

私が戸惑いながらもそう言うと、先生は当たり前でしょ、と言うような表情で言った。

「寝てたから」



「何度起こしても起きなかったんだよ。」

…否定は…出来ない。

確かに私は、寝起きが本当に悪くて、小学校のキャンプも修学旅行も、中学校のキャンプも修学旅行も、寝るのは一番始めで、起きるのは一番最後だった。

でも、だからって何で自分の車に?

私が、先生をじっと見ていると、しばらく気づかないフリをしていた先生も、観念したのか、一息ついて言った。

「何。」

今度は、先生が私をじっと見る。

私は、
「な、何でも…」
と返して、さっき先生にもらった缶のココアを開けて一口飲んだ。

「…美味しい…、です…」

自然に出た言葉。

先生は、私の方をチラッと見てから、クスッと笑った。

「…それは、よかった。」

暫しの沈黙。

静かだな…

っていうかよく考えたら先生と2人っきりで。






…それってやばいんじゃないのか。

私は残りのココアを飲み干して

「…私歩いて帰れますから。
ありがとうございました。」

そう言ってドアにてをかけるとその手を先生が上から握る。