私達が手を握ったのを確認したトオルさんは、
「次、基本のステップいくわよ。片方の手を離して、お互いにお互いの体を支える様に背中に腕を回して、アン、ドゥ、トゥロワよ。」

トオルさんはとてもさっきの人と同一人物とは思えないほど、ダンスの教え方が上手かった。

私も、何回か三浦君の脚を踏みながらも、トオルさんが教えてくれた何個かのステップを踏む事ができた。

二人で手を繋ぎながら、一生懸命に踊っていると。

トオルさんはパンパンと手を叩いて
「はい、今日はそこまで!この調子なら大丈夫ね。」

その声に立ち止まると、フラフラしていたからだろう、三浦君は小さな声で、
「大丈夫か?」
と聞いてきた。

私は顔の汗をぬぐいながら
「うん、大丈夫。社交ダンスって意外に汗かくんだね。」

「そうだな。下手な運等よりよっぽどこっちの方が汗かくな。」
と言った。

クスクスと笑っていると、先生が
「…二人とも早く着替えておいで。」
と言った。