その言葉に思わずあっけに取られていると先生はネクタイを直しながら
「…鬱陶しいですね、相変わらず。」

「貴方は相変わらずかっこ良いわねー!惚れ惚れしちゃうわ!」

全く話が通じていない。

先生はため息をつきながら、不自然に構えていた私の背中を押した。

「姉さんから、聞いてるとは思いますが…長谷川羅々です。」

「よ、よろしくお願いします…っ」

それに続いて先生は三浦君に一歩前に出る様に促す。

「三浦優希です。」

先生のその言葉に三浦君は、うす、と言って頭を下げた。

茶髪の人が恐る恐ると言った感じで手を伸ばしてるのを見て、先生は大きな声で
「抱きつかないでくださいね!」
と言った。

茶髪の人は残念そうに口を尖らした。

先生は何度目か分からないため息を吐いて、
「トオルさんも自己紹介して下さい。」
と言った。

トオルさんは私の方を一切見ずに、三浦君の方だけを見て
「んもーしょうがないわねぇ。
私は、遠山トオルよ。将来の名前は加藤トオルになる予定で…「なりませんから。生徒が勘違いするんでやめて下さい。」

先生はそこでいったん言葉を切って、私の方を見た。

「羅々、先生にそんな趣味はないからね。そんな顔しないでくれる。」

…知らぬ間に顔に、不安が出ていたらしい。

「…す、すみません…」