ふっと意識が戻ったとき、鷹雅は何やらたくさんの柔らかなものに囲まれていた。

背中はもちろんのこと、手足、首元、そして頭まで。

まるで羽毛にでも包まれているかのごとき柔らかさ、そして温かさ。

(……なんだ?)

薄く目を開けると、少し離れたところに長い黒髪の少女の後姿が見えた。

(遊里っ!?)

一瞬、クラスメイトのハイテンションメガマックス転校生かと思い身を硬くしたが、どうやら違った。

「うん、お兄ちゃんも怪我はないって。一応、小堺せんせーに診てもらうって言ってたよ」

かわいらしいこの声は遊里のものではない。かと言って、まったく知らない者でもなさそうだ。

左右の耳の上に白いリボンをつけた、背が低くて小動物的雰囲気を醸し出しているあの少女の名前は橘花音。クラスは違うが、鷹雅と同じ天神学園の一年生だ。

何故彼女がここにいるのだろう、とぼんやり考えていると。

「それなら良かった……。彼の容態は?」

声変わりしたばかりのような少年の声が聞こえてきた。よく見れば花音と向かい合うようにして、彼女に瓜二つな顔立ちの少年が立っていた。