そんな風に表面上強がってはいるものの、やはり心労には勝てなかったらしい。

雪ん子の追撃から逃れ、ほっと一息つきながら翼を折りたたんで地上に下りたのだが……その、下りたところがいけなかった。

アスファルトに片足を軽くつけて顔を上げるのと、派手にクラクションが鳴るのはほぼ同時だった。

「あ、やべ……」

鷹雅が下りたのは、天神学園方面から延びる道路のど真ん中。

至近距離にある車が、耳を劈く急ブレーキの音を響かせる。

逃げれば良かったのだが、逃げるなんて言葉は俺の辞書にはないぜ、な鷹雅。

咄嗟に身を低くして攻撃態勢に入り、しかし人間相手に妖力を出したら間違いなく車ごと吹き飛ばして、大怪我どころか命までも──という一瞬の躊躇いのおかげで。

勢い良く黒塗りのロールス・ロイス・ファントムに跳ね飛ばされた。