東城とともに昇降口前に取り残された花音と雪菜は、しばらく拓斗の怒りオーラに圧倒され、無言のときを過ごした。

そして彼の後姿が闇の中に消えていった頃、ようやく我に返った。

「大変、花音ちゃん! 拓斗君、きっと誤解してるんですよぅ!」

「えっ、誤解?」

「花音ちゃんが男の人に意地悪されたんだと思ってるんですー!」

「え、違うよっ!?」

「だから早く止めに行かないと!」

右手で上前を押さえながら、雪菜は走り出す。

花音も五所川原を抱きながら、ぽてぽてと走り出した。

それを東城が大股で歩きながら追いかける。




そして家庭科室では。


巣にかかる蝶を待ち構える蜘蛛のごとき女が、真新しい『アタシの目の保養コレクション』を眺め、ぐふぐふと笑みを零していた──。






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