どうしたのかな、と妹を眺めていると、髪を結んでいる白いレースのリボンが解けかかっているのに気づいた。

「花音、リボン取れそうだよ」

「え? ……あ、ホントだ」

頭に手をやり、花音はしゅるりとそれを解いた。

それを見ながら、雪菜は苦笑。

「あはは、無理やり脱がされたから、取れちゃったんですね」

その言葉に、暗闇迫る廊下の空気が、一瞬ぴきりと音をたてた……ように感じた。

「え?」

拓斗の表情が強張る。


ユキナサン、イマ、ナントイイマシタ?


頭の中が疑問符だらけになる拓斗を置き去りにして、女子たちの会話は進む。

「あ、そっか、脱がされたときかぁ。びっくりして暴れちゃったからぁ」

えへへ、と照れ笑いの花音。

「本当にビックリでしたね。花音ちゃん、大声で泣き叫ぶから縛られちゃったし……」

「だって怖かったんだもん……」

「あははは。笑顔全開で写真撮られちゃいましたしね……」


2人は先程見学しに行ったコスプレ部で、「試し撮りしてあげるわぁん!(はぁと)」と叫びながら無理やり衣装を着せられて写真を撮られた、という話をしていた。

しかし全容を知らない拓斗にとっては、頭が真っ白になるくらい、なんともけしからん話である。