もう陽が沈んで暗くなろうという時分だ。

彼女専属の執事、南原がいつも陰から登下校を見守っているとはいえ、花音には暗くならないうちに帰りなさいと言ってあるのに。

ちなみに執事南原は、腰まである長い黒髪の、色白美形執事だ。

ちょっと残念美形な兄、和音と並んでも引けをとらないキラキラな執事である。

え、もしかして、お嬢様と執事のイケナイ恋が始まっちゃったり? ……と思われた方もいるかもしれないので、先に言っておく。

絶対、それはありえない。

何故なら南原は。

自分大好きナルシストオカマであるからだ。

ちなみに、仕える花音のことは二番目に大好きなので、彼女のことは姉のような気持ちで見守っているらしい。


……と、脱線したが、この辺りで話を戻す。


「あ、あの、えっと、その……ね?」

雪菜は拓斗の「何をしていたの?」という質問に、困ったように花音を見た。

その花音も、困ったように眉根を寄せ、五所川原をぎゅう、と抱きしめるだけ。

拓斗は首を傾げる。

なんだか2人とも様子がおかしい。