「私のぶんはあるから、大丈夫だよぉ」

にこぉっと笑って傘を鷹雅に渡し、更に五所川原の腹に手を突っ込む花音。

なかなかシュールな光景だな、と思いながら眺めていると、ピンクの水玉の傘と、それとお揃いのレインブーツまで出てきた。

「お兄ちゃんは西坂が迎えにきてくれるから大丈夫だけど、拓ちゃんは持ってたかなぁ……心配だから持っていってあげようっと」

ぶつぶつ言いながら、更に紺色水玉傘が出てくる。

「一体いくつ入ってんだ」

「傘はこれだけだよぉ……あ、もっと貸して欲しかった? 遊里ちゃんのぶんとか」

「なんでアイツ?」

「一緒に帰るから待ってたんじゃないぴょん?」

「なんで一緒に帰らなきゃならねぇんだよ」

互いに、しばらく沈黙。