その証拠に、胸の奥があたたかい。

時折、母が近くまで来ている。それをこの数ヶ月、ずっと感じていた。

ふとした瞬間に、陽だまりの中でまどろむ優しい時のように、あたたかい気持ちに包まれる。

おかげで父の夢を見ることが増えた。

傍で見守ってもらっているからだ。

「一緒に行っても足手纏いになるなら──私はここで、笑って過ごしていようと思います。母が少しでも安心していられるように」

そう言ってから、あ、と申し訳なさそうに小岩井を見る。

「小岩井さんにはお世話になりっぱなしで……ご迷惑でしょうけれど……」

「……いいえ」

小岩井は静かに首を振った。

「迷惑などではありませんよ。以前にも言いましたが……自分もこの部屋は借りている身……。ほとんど居ることもありませんし、ご自分の部屋と思って寛いで下さればいいのです」

淡々とした口調。

けれどもはやり、そこに温かいものを感じる雪菜は、ふわりと微笑む。

「ありがとうございます」