けれど物言わぬその背中を見て、雪菜は微笑んだ。

「やっぱりそうでしたか。うふふ、小岩井さんって、嘘が下手ですよね」

その言葉に、小岩井は肩越しに振り返る。

雪菜にはその横顔が驚いているように見えた。

「大丈夫です。小岩井さんが告げ口しただなんて言いませんから。……私、解るんです。大切な人が傍にいると、胸の奥が温かくなるんです。だから父の夢も見たんですね、きっと」

にこにこと笑う雪菜に、小岩井は何も言わない。ただそっと、瞳を伏せる。

「……母は、元気でしたか?」

「……ええ」

瞳を伏せたまま、小岩井は応える。

「それなら良かった」

雪菜はにこりと微笑んで、立ち上がる。

「ご飯の用意をしますね」

そう言って簡易キッチンへ向かう雪菜の背に、声がかかる。

「逢いたいですか」

静かに投げかけられた声に、雪菜は足を止める。

「……想いあう家族が離れ離れになる謂れはないと……自分は思います」