忍の話を聞いて潤は多少の疑問を感じた。



まず、忍とアスタロトは接触していないのに、何故彼女は“心の中をいじられている”と感じたのか?



…“遠隔操作”?…あり得ない。



接触せずに思考に侵入は不可能に近い。



寝ている間に接触すれば可能かもしれないが、本当に彼女が危機を感じれば右京が居なくても自分が召喚される。



「おそらく“錯覚”でしょう…」



「“錯覚”?…やっぱり思い過ごしって事?」



「いえ、違います。わざと“錯覚”をさせているんです。」



「どうして?やり方が回りくどい気がしない?」


…確かに回りくどいが、忍様の不安がお腹の子にも伝導すれば…



潤はやっとアスタロトの狙いに気付いた。



…右京様…!早くしないと手遅れになります…!



グッとカップを握りしめる潤を忍が心配そうに見つめる。



潤は不安を悟られまいと、いつもの様に「大丈夫ですよ」と笑みを浮かべた。



「右京様はあれでも頼りになる方です。」



忍も「そうよね」と笑ってそっとお腹をさすった。