笑うなと口を尖らせた田所にしのぶは必死に笑いをこらえる。



「お前見たか?黒崎様の腕!でかい刺青があるんだ。」



「そんなの“vale”のアダムにだってあるじゃない…」



確かにそっくりなタトゥーがアダムにもあった。



「…ただのファンか?」



「そうかも!だからVIPルームも見たかったのね。」



「なるほど…って、11階も行ったのか!?」



「し、仕方がないじゃない!…あのグリーンアイで見つめられたら…無理なんて言えなかったのよ!」



頬を染めて言い訳をするしのぶに田所は苛立ちを隠せなかった。



…相手は既婚者だっていうのに…何赤くなってんだよ!



言葉にすらしなかったが、不機嫌な彼を見てしのぶは悪戯に笑う。



「なに~?ヤキモチ~?」



「そ、そんなんじゃねぇよ…」



「…そうよね…そんな関係じゃないものね…」



彼女は小さく呟き立ち上がった。



だが田所はしのぶを追うことが出来なかった。