バクバクと煩い心臓の音が相手に聞こえるのではと心配になる。



「沖田さんって…俺の事嫌いでしょ?」



「えっ!?そんな…!嫌いじゃないですよ!」



嫌いではないが、しのぶは彼が苦手だった。



田所でイケメンには免疫があるはずなのに、この“黒崎右京”という男は別格だと思う。



「そう?なら良かった。」



沈黙が訪れ、非常に気まずい。



しのぶはこの気まずさを打破しようと無理矢理会話を探す。



「お、奥様は一緒ではないのですか?」



「あぁ、夜に備えて休むって。」



「えっ!?…あ、あぁ、そうですか…」



…ヤバい!墓穴掘った!



夜に備える理由を想像してしまい、顔が一気に熱くなる。



「ぷっ…やだなぁ~変な意味じゃないよ?彼女、“vale”のファンなんだよ。」



「あ、…そうでしたか…ごめんなさい!」



真っ赤になって頭を下げるしのぶに右京はゲラゲラと笑っていた。