沖田しのぶは緊張でさっきから息苦しさを感じていた。



…なんで私が…!



チラッと隣を見ると彼はまるで翡翠のような瞳でエレベーターの扉上部を見つめていた。



不意にそのグリーンアイが自分に向けられ、思わず視線を反らす。



…誠のヤツ…絶対許さないんだから!



「…悪いね…残業だったんじゃない?」



内心を見透かしたように彼は申し訳なさそうな声でそう言った。



「いえ、大丈夫です!」



そして、NOと言えない性格の自分に嫌悪すら覚える。



彼はしのぶに「無理しなくていいよ」と苦笑した。



「沖田さん。」



「は、はい!?」



右京に名前を呼ばれたのは初めてだった。



自分の名前を覚えててくれただけで緊張は最高潮だった。