アダムは冷蔵庫からビールを取り出し、右京に黙って投げて寄越すと、ベットの縁に腰を下ろした。



『会いに来るだろうと思ってたけど、随分早かったね。』



『ちょっと予想外な事があってね。』



『予想外?』



『アスタロトが現れた。』



右京の言葉にアダムの眉が微かに振れた。



『…何故アスタロト様が?』



『こっちが聞きたい。お前は何も知らないのか?』



『俺達にも階級があるのは知ってんだろ?アスタロト様は大公爵…つまり、ナンバー3だ。片や俺はその下の宰相、ルキ様の配下だ。』



彼がルキと呼ぶ悪魔、ルキフゲスもそんなに階級が低い訳ではない。



が、その地位でも知らされていないとなると、同時に二つの動きがあるという事になる。



『上層部は独自に動いてるのか…。』



だからフォカロルである潤は“複雑”という表現をしたのだ。