「…あの、意味わかんないんだけど?」

「…ッチ」
「あのねーっ僕ら、君を監視するようにとある人から依頼を受けたのっ!!だから、24時間体制で今日から監視させていただきますっ。」

 …は、はい?
 しかも舌打ちされた?
 ていうかそれより…

「ええええええええええええぇ!??」

 
「由、由良、あんた何したの?」
「というわけだ。わかったな。」
「ねっいいでしょ?」

 いやいやいやいや。

「何もしてないってば!わかんないし!よくないわ!説明せいっ!」

 …誰だってこう言うと思う。
 ホントに何もしてないよ!?
 
「仕方ねぇな…説明しろ。」
「うん…って僕!?自分でしないの!?」
「めんどい。こいつ頭悪そう。」
「はぁ!?ちょっとあんたら!」
「うわっストップ!説明するからっ!」

 小さいほうが言い争いがヒートアップする直前で止める。なかなか手馴れてるのはこの電柱のせいだろうか。

「僕、銘音学園裏生徒会調査係所属の神谷悠!神様の谷でかみや、だよっ」
「同じく、桐谷修平。」
「裏生徒会調査部っていうのは、問題アリな生徒を監視して、文字通り調査報告するところ。ただ今回は学校依頼じゃないけど…。で、今回君がターゲット。問題ないと依頼人が判断したら調査は終了!OK?」

 …余計OKじゃない…。
 ていうか銘音学園てうちの学校じゃんか!
 
「調査って誰から!?ていうか問題アリってなんのこと?わかりやすく言ってよ!」
「それは無理だよっ?だって守秘義務あるもん。」
「それはお前が気にすることじゃない。」

 …なっ…こいつ…らっ…

「ていうか、ねぇ…由良…24時間体制って、まさか、寝てる時とか、お風呂とか、そういう個人的なとこも…?」
「まさか…ありえな…」
「そーだよっ。」
「当然だな。」

 …。

「何なの!?あんたらストーカーか何か!?警察に訴えてあげましょうか!?ふざけたこと抜かしてんじゃないわよ!そんなの冗談じゃない!2度と、私の前に現れないでよ!!行こっさや!!」
「う、うん…」

 その場を走り去る私達。
 ホント意味わかんない!
 世の中にはこんな変な人もいるんだってことがよーくわかった!全く失礼な話だ…。

「由良、大丈夫?」

 さやの心配そうな声。
 うん、さやは本当に優しい。
 いつも適当で抜けてたりするけど、すごく優しい子なんだ。

「うん…かなり腹立つけど。あんな変なのに絡まれたの初めて。2度と絡まれたくないわ…
「そか、ならいいの。んじゃ、気をつけてね!」
「うん、またね!」

 商店街の角を曲がり、去っていく後姿を眺めながらぼんやり考える。
 さっきはあんなこと言ったけど。
 …本当は、不安だった。
 よくわかんない人がいて、
 世の中全部わかった気でいた私を
 突き放す感じ…。
 高校生って、まだ大人じゃないってよくわかった。
 正直、お母さんが恋しくなったりもする。
 だめだなぁ…まだまだだ。

 ため息を残して、輝の家へと足を向ける。
 暖かな光を求めて。