「圷チャン」
「惠チャン」
「また間違われたねぇ」
「あはは・・・」
「ホント、後ろもソックリだよ」
「ずっと一緒だったからね」

木之下惠。同じクラスの若干男子よりの女の子。
フレンドリーで、すごく人気者だ。

「でも最近は、空の方が男っぽくなってきたよね」
「え」
「圷チャンの方が女の子らしいし。あ、女の子だけどね」
「あはは」

海は教室に戻って、次の授業の支度をした。
すると、空が息を荒くしながら帰ってきた。

「空」
「海・・・伊本・・・は?」
「い・・・いないよ。何したの?」
「ちょっと・・・ね」

ニヤリと笑い、海の隣の伊本の席に座った。
フゥーっと呼吸を整えて海の肩をもった。

「実はね、ヤツの・・・ね」
「うん」
「水筒に・・・」
「う・・・うん」
「給食で出た・・・味噌汁を入れた・・・の」
「えぇ!?」
「あははははっ!!」
「ちょ・・・それは・・・」

空は腹を抱えて爆笑した。
海はクスクス笑う。

「大宮ぁああ!!」
「げっ!」
「あっ!」

教室にズカズカと入ってくる巨体、伊本が空の頭を叩いた。

「痛っ!」
「ちょっと!」
「圷は黙ってろ!大宮ぁああ!!」
「たんまっ!ジョーダンだって・・・プフッ」
「てっめぇ」

本当にかわった。
海と空は違うクラスで、少し会う時間が減っていったからだろうか。
気づかなかった。
少しずつ『違ってきた』ことを。