そういえば、
幽霊はお腹が減らないらしい。


ずいぶん何も食べていないけれど、
空腹感はまったくない。



「こうやってさ。」



と彼は言った。


「どんなに凹んでたって腹が減るんだから、まだ生きろって事なんだろうな。」


誰に言うでもなく、
彼は呟くようにそう続けた。



「そうね。幽霊はお腹が減らないみたいだし。」



答えになっているかわからない答えを返すと、
彼は私を見て目を細めた。


「アナタが幽霊なのに、他人事みたいに言うね。」


そう言われて、

そうかもしれないと思った。



幽霊だって実感がわかないし、

死んだ時の記憶も、

何故ここにいるのかも思い出せない。



生きていた時の記憶すら、
曖昧にぼやけて私には見えない。


死んだ時に何かあって忘れてしまったのか、

ただ幽霊というのはそういうモノなのか。



私にはわからない。



それを仕方ないと諦めてしまうのは、
元よりの私の性格のような気がするけれど。