「死ぬってさ。」


彼は唐突にそう言った。


「どんなかんじ?」


そう問われて、
なんて答えていいかわからなかった。



「苦しかったか?」



続けられた問いに、

私は首を傾げた。


苦しくなかったかどうかは、

わからない。



覚えていないのだ。



「どうして死んだんだ?」


その無遠慮な質問に、
私は苦笑で答えた。


さっきからひっかかるのは、
この人の喋り方だ。


なんだか、
見下されてるみたいで気分が悪くなる。



声質の問題か、

抑揚の付け方か、

本当に見下しているのか。


「アナタもだんまりか。」


彼はそう言った。



”も”という事は、
他の人も彼にそういう態度をとっているということだろうか。



つまりは、無言の抗議。



「いっぱい質問するのに、私の話はあんまり聞く気、無いでしょう?」


そう答えたら、
彼は私をジッと見た。


「そんな事、ない。」


彼はそう不機嫌に言った。



さっきまで泣いていたとは思えない。


照れ隠しではない。


これが、
この人の性質なのだろう。


「死んだときの事は覚えてないの。気付いたらここにいたから。」


私はそれだけ答えた。


彼はなるほど、
と言って私から視線を外した。



その視線が、
地面に落とされる。



「死んだら天国にまっしぐらってわけでもないのな。」


彼はそう呟いた。


「そう上手くは出来てないみたいね。」


私が答えると、
彼はおもむろに膝に乗せたままだったコンビニの袋をガサガサとしだした。


引っ張り出したのはサンドイッチで、
彼は包装をビリビリと剥ぐとパクリとかじりついた。