「貴方が此処に来る前から此処にいたわ。見ての通り、ちゃんと喋れる。何をしてるのかは自分でもわからないの。ただ、人を待ってるって事以外。」
彼は聞いておきながら驚いた顔をした。
「アナタは、生きている?」
変な質問だ。
彼もわかっているのか、
少し目が泳いだ。
「生きてないわ。たぶん。」
私が答えると、
彼は視線を私の足に向けた。
つられて私も、
自分の足を見下ろした。
決して細くはない足が2本、
地面にのびている。
スカートを履いているから、
膝から下しか見えないけれど。
「幽霊なのに足がある。」
私がそう呟いたら、
彼はブッと吹き出した。
驚いて彼を見たら、
彼は笑いを堪えるように私から顔を背けて
唇に握りこぶしを当てていた。
肩が揺れているから、
確実に笑っている。
「何よ。」
少し不機嫌に言ったら、
彼はこちらを向いた。
クックッと堪え切れない笑い声がもれる。
「アナタが驚いてどうするんだよ。」
彼はそう言って、
もう一度私の足を見た。
目に涙が溜まっているけれど、
これは明らかに笑い泣きだ。
「たしかに足があるな。これは新発見だ。」
彼はそう言って、
また吹き出した。
失礼な人だ。
レディの足を見て笑うなんてさ。
けれど、
やって来た時のあの暗い表情が明るくなって、
なんだか少し嬉しかった。